第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
クリス、リアナを交えた6人で私達は再び移動する
とは言え、トーマがズイズイ進む為に私達は食らい付くようについていくしかないのだが
愚痴をこぼしたい気分を抑えて"最後の一人"とやらのいる場所へ向かう
到着した先は第二十七層であった
九の倍数の層は同じ街の形をしている
春から夏へ移るような新緑の季節を街は見せていた
先程クリス、リアナの両名を引き込んだ事により、誰を目的にしているのかがさっぱりわからなくなってしまった
人選の理由が見えない――あるとするなら…一つだけ、聖槍十三騎士団
という事は、彼らと何かあった人だろうか
しかし誰だか、想像は出来ない
「見つけた」
疑問を持ちながら進む中、トーマが口を開いた
直後、歩行スピードが上がる
だから後ろを気にして欲しいと思いながら私達もついていった
着いた先は喫茶店のオープンテラス席であった
「よう、探したぜ」
トーマが話す先にいたのはあの両手剣使い――ジンであった
「何の用だ?」
ジンは手にしたカップを机の上に下ろし、こちらを見る
しかしトーマは気にせず目の前に座った
「んなもん決まってるし、お前も分かってんだろ? 聖槍十三騎士団だよ」
聖槍十三騎士団の名を聞いたジンの表情が僅かに動いた
「あるだろ? お前もよ」
「それで、どうするつもりだ?」
「潰すんだよ、アイツら全部な」
自信満々に告げるトーマに対し、ジンは頭を掻いて怪訝そうな表情であった
「仮にやるとして、どうやる?」
「潰すは潰すで変わらねぇよ。その為に、俺らと来い」
まるで自分が率いているかのような発言
だが、ジンは納得したかのような顔であった
「成る程な、お前ら全員奴等と何かあったって訳か。因果だな」
私達を見回すジン
決して関わりがなかった訳ではないが、改めて緊張を感じる
ややあってジンが口を開いた
「……確かに、俺も因縁のある奴はいる。そして潰さなきゃ現実に帰れないなら潰すまでだとも思っている。故に潰すのは賛成だ、だが仲間になれというなら話は別だ」
「何がいる?」
「簡単な条件だ。俺と渡り合える強さがあるかだ」