第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「すっごいの出来たよ!!」
数分後、満面の笑みを浮かべたクリスが完成品を持ってきた
すっごいの――と本人が言うに相応しい、素人目にも分かる一品であった
白銀の剣
不純物を感じさせない輝きと、シンプルさがかえって力強さを感じさせる
「はい、どうぞ」
クリスが私に剣を差し出してくる
私用に作られているから当然だろう
しかし今の私は…戦えるか分からない
不安も恐怖もない交ぜになって私に襲い来る
震える手で、剣を取る
持ち手は手の肌とフィット――故に私の気持ちを伝えるように震える
私に訴え、問い掛けているようだ――出来るか、と
自信はない
事実今も、決まらないまま流されて剣を取っている
そんな自分が戦えるのだろうか
そう思う私の気を伝える手――その手に別の手が重なった
「ちょっと重かったかな?」
クリスが私の手を支えるように重なっている
少し、震えが穏やかになる
「今はそうかも知れないけど、いつか丁度良くなるよ。それでも大変なら、私もいるし――リアナもいるからね」
「ちょ、クリス――」
言いながらクリスはリアナの手を引き、私の手に重ねる
リアナは一瞬戸惑ったが、震えが収まるのを確かに感じたようだった
「まぁ…やるって言っちゃったし、クリス放置してたら何するか分かんないし、やれるだけはやってあげる」
「ありがと…二人共」
自然と感謝が漏れる
少しは、落ち着いただろうか
「さて、まとまった所でだ。次に行くぞお前ら」
直後、トーマが口を開く
息つく暇くらい欲しいものだ
「またかよ、ってかまだあんのかよ」
辟易したケンタの声
しかしトーマは当たり前と言いたげな返答をした
「まだあるさ。あともう一人、引き込む奴がいる」