第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「上々上々、良いじゃないの。歓迎するぜ」
言いながら、トーマはストレージを探っている
まるで歓迎とは程遠い図である
「さて、早速一つ仕事をしてもらおうか」
「はぁ? 人使い荒っ…」
苦言を呈するリアナを無視してトーマはアイテムを取り出した
光輝く石――鉱物であった
「オリハルコン…なんてあったな。レア度は相当、武器にすれば――余程の物が出来る。まぁ要は何だ……コイツで武器を作れ」
オリハルコン――ゲームでは最高ランクに位置付けられる事もある素材
それを武器にする――という事は本気なのだろう
「いいよ、何にするの?」
クリスが快諾する
しかしこれは当然の疑問であった
作り手としても何を作るかで条件が切り替わる
故にこの疑問であったが奴の事だ、どうせ自分のものだろう
「剣だ、コイツが使う用のな」
「は?」
そう考えていたからこそ、私は奴の発言に呆けてしまった
「お前今武器ねぇだろ? 今から素手で挑む気があるなら話は別だがよ、ねぇなら用立ててやろうって訳だ。まぁそういう訳で、やってくれや」
「はいは~い」
まるで馴染みあるというように奥の作業場へクリスは向かった
私は今しがたの事が未だ信じられない
このトーマという男が他人に向けて何かをするなど考えられない
何か裏があるのでは…と思ってしまう
「何だよ?」
「別に」
だが、確かめる気にはならなかった
どうせ大したものではない――言い聞かせながら、クリスを待っていた