第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「あ、リリちゃんだ。やっほー」
私達に気付いたのかクリスはいつもと変わらずに私達に笑いかける
……いつの間にか変な呼び方をされているが
しかしリアナはそうとは行かなかった
「人の店の扉吹っ飛ばしておいて、用も何もないでしょうが!」
「あぁあぁうるせぇ、用件だけ言うぞ」
私達が申し訳ないと思ってしまうリアナの文句
しかしトーマには関係ないようだ
「お前ら、俺らの仲間になれ」
またも唐突な用件
何故簡単にいくと奴は思っているのか
この二人が仲間になるという事は実質店を畳めと言っているようなもの
「アンタバカなの!? 私達商売やってるの、分かる?」
「オイオイ、商売で聖槍十三騎士団は潰せねぇぞ」
聖槍十三騎士団――
やはりその存在は強くあったようでリアナは黙りこんでしまう
トーマはまるで最初からそれを狙っていたかのようだった
「お前らだってあるんだろ? 因縁ってのがよ。それをどうにかせずに終わるたぁつまらねぇ人生だよな」
続けて放たれた言葉にリアナもクリスも言葉を発しない
やはり思う所があるのだろうか
「……私は、仲間になっても良いと思うけどな」
「はぁ!?」
ややあって、クリスが口を開いた
予想もしてなかった答えに私達は当然驚いたし、リアナも強く反応した
「リアナ、私やっぱり思うの。このままあの人達を放っておけないよ」
あの人達――聖槍十三騎士団だろうか、それとも二人にもトーマの言う因縁があるのだろうか
「クリス、アンタ何言ってるか分かってるの? 戦うんじゃない、殺し合うんだよ!? 私もアンタも…死ぬかもしれないのに!」
「そうだね」
余りにもあっさりしたクリスの返答にリアナはたじろいだ
「でも私はあの人達を知りたい。敵になったとしても、もしかしたら仲良くなれるかもしれないしね。う~ん…でも死んじゃうのも嫌だし…リアナも一緒なら嬉しいな」
屈託なくクリスはリアナを見つめる
ややあってからリアナが観念したように口を開いた
「ああもう分かった、分かったから! 私もついて行けば良いんでしょ!? やってやろうじゃないの!!」
ヤケクソのように放たれた言葉
しかしトーマは狙い通りであるかのように、口元を歪めた