第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
そうして私達はトーマについていく形で外へ出た
久々の外は、あの時のような曇天であった
奴は私達のペースなどお構い無しに進んでいく
一応見失わぬように気を付けてはいるが、こちらにも気を配って欲しい所だった
そうしている間に私達は第十二層に辿り着いた
ここに奴の言う"仲間になる奴"がいるのだろうか、些か不安だ
トーマという男、普段の行動を考えるに基本的に一人で行動しているのは明白――それ故奴の口から仲間などという言葉が出る事がまず考えられない
仮にいたとしてまともではなさそうだが…
同じレベルに頭のおかしい人間を想像すると溜め息が漏れる
そしてこんな所にいるのだろうか
奴のような存在は前線に出たがる、だからこそ十二層にいるというのが信じられなかった
(あれ…でもここって…)
疑いの中に別の感覚があった
それはここに来た覚えがある事――一度や二度ではない、何度もここに来た
「ここだな」
トーマは到着したとばかりに停止した
見覚えがあるなんてレベルではない
もう見知った場所――クリスとリアナが経営する店、"Duologue"であった
この中で待ち合わせ? それともクリスとリアナ本人?
疑問は尽きないが、トーマは気にしていないようだった
「ノックはしてやる…よッ!!」
そのまま当たり前のように奴はドアを蹴り抜いた
ノックとは言ったもののまるでノックとは程遠い迷惑な一撃が、扉を開けるように吹き飛ばした
「ちょ…」
信じられない
人間として疑う行動を奴は平気でやってのける
しかし奴は構わず中へ入っていった
仕方なく私達も続く――当然中は埃が舞っていた
「リアナリアナ! 大変だよ! 地震雷火事親父、上司と先輩だよ!!」
「んな訳ないでしょ! ってか何なの!?」
当然の困惑、しかしトーマは埃が収まったと同時に当然の如く口を開いた
「よう、お前らに用がある」