第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「私、は ……」
どうすれば良いのだろう
武器はない所か、持つ手は強張る
戦えない――そんな状態なのに……
(騎士団は…倒さないと帰れない…)
事実だ
だが私の中にそれ以上の気持ちが同居している
あのにやけ面を叩き潰したいと――
瞬間、何かのビジョンが走った
光を携えるラインハルト、それに剣を振り下ろし―――
「思ったな? 一瞬でも」
歓喜に声が私を現実に引き戻した
目の前には変わらず危険な瞳が私を覗いている
「否定は出来ねぇ、むしろさせねぇ。お前にはその気がある。なら話は簡単だ」
そして奴は唐突に私の胸ぐらを掴んだ
「行くぞ」
「離して」
「嫌だね」
そのまま私を無理矢理に引っ張り外へ連れ出そうとする
「ダメ」
エリーがその手を止めた
「離してってリリィが言ってる」
言いながらエリーの手に力がこもる
それは私の胸ぐらを掴むトーマの腕を少しずつ離していった
「あぁあぁ分かったよ。だがここで退く気はねぇ、俺と来てもらうぜ」
諦めたのかあっさりと手を離すトーマ
しかし、本懐は諦めていないと言を続けた
「来てもらうって、何処に行くんだよ?」
「簡単だろそんなもん――」
ケンタの放った疑問
トーマはさも当然のように答えた
「仲間にする奴の所だ」