第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「何言ってるの…」
「馬鹿かお前、仲間になりに来たって言ってんだろ」
さも当然かのように言を続けるトーマ
余りに急…というか有り得ない、現実感が無い
「ぶっちゃけいらない」
「つうかお前、オレらと合わねぇだろ」
畳み掛けるようにエリーとケンタが口を開く
事実二人の言う通りだ
第一層ボス戦でも、その後幾度となく出会った時も勝手の限りをしてきた
それが急に仲間になるだの言っても信じられない
「それがいるんだよ。ついでに言うとな、俺とお前らは最低一つ――聖槍十三騎士団って点で合うのさ」
聖槍十三騎士団――
その言葉が出た瞬間に緊張が走った
「お前らだってそうだろう? 関係ってか因縁だな…ねぇとは言わせねぇ」
因縁――
何らかの関係があったらしいとは認識している
そういう事だろうか
「俺はあの野郎――メルクリウスが気に入らねぇ、ウゼェとも思ってる。そんで…お前もそう思ったろう?」
ギラつく獣の視線が私を捉える
否定は出来なかった――確かに私はあの蛇に対して思った事がある、ウザいと
「何処を探してもメルクリウスをウゼェって思う奴はお前だけだ。だから俺はここに来た。お前らと…聖槍十三騎士団をぶっ潰すのさ」
「本気なの…?」
「じゃなきゃ来ねぇよ」
余りにも大それた発言に驚きを隠せない
だが何故だろう…戦うべきだと感じている私がいる
「……分かった、乗ってやるよ」
初めに口を開いたのは意外にもケンタだった
「お前は気に入らねぇ、だけど聖槍十三騎士団とやるってんならちょっとは我慢してやる。オレも騎士団に……アンナに用があるからな」
彼の言にトーマはニヤリと顔を歪める
賛同者は出た――後はどうすると言わんばかり
「確かめなきゃいけない、あの人達と向き合って」
ゆっくりとエリーが口を開く
「それは分かってる。けど……」
エリーと視線が交わる
不安、心配――そんな風なものが込められた眼差しであった
「お前はどうするんだ? なぁ?」
その間にトーマがずいと寄ってくる
愉悦が見え隠れするも、それ以上のものを宿らせた瞳
「お前も思うだろ? ラインハルト・ハイドリヒ、そしてカール・クラフト=メルクリウス……ぶっ潰したいってよ」