第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
拠点のある第十一層は珍しく雨が静かに降っていた
部長、ミヤ、ユウ、シンジ先輩、セレナさん――
あの時届かなかった、そしてもう届かない人達が去来する
届かないと認識すればする程、心が軋む
聖槍十三騎士団――強大過ぎる新たな敵
まるで今では格が違うと言わんばかりの力
それが私達の最後の障害
しかし、そのどちらも今の私には何も出来ない
恐怖と無力感が私を苛んだ
聖槍十三騎士団の影響は私以外にも及んでいた
エリーは何処かで会ったらしい――その時は戦えない子供達を養っていたようだ
その子供達も、今はいない
死ぬと分かって養っていたのか――それが分からない
ケンタは、あの黒いものを伸ばしていた少女と知り合いらしい
黒いものに触れていた間、身体が全く動かせなかった
本来なら有り得ない力――それを有した存在に太刀打ち出来るのか
(多分…出来ない…)
戦えない――
現実がのし掛かる
喪って喪って…次は誰か、自分か
言い知れぬ恐怖と虚無感、それらが再び私を襲った時――
「見つけたァ!!」
――何かの叫び声と轟音が響き渡った
思わず玄関へ向かう
「オイオイ何だってんだよ!?」
「………」
静寂となり、直後に扉が勢い良く開く
外の土煙と共に入ってきた人物――
「よぉ、探したぜ」
――トーマ、あの男であった
この男、会う度に私達は散々な目に会っている
故に警戒するのは当然なのだが、この男にそんなものは関係ない
そのままこの男は、ズカズカと中へ踏み入りリビングにあるソファーに座った
「しっかし何だ…随分とシケてるじゃねぇか。折角良いニュースを持ってきたのによ」
良いニュース…
額面通り受け取ればその通りなのだが、この男が言うと嫌なニュースにしか思えなくなってくる
故に――
「お前らの仲間になりに来た」
――言っている事が一瞬、理解出来なかった