第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
篩? 選別?
何をだ、何から何を選ぶと言うのか
「無論それは諸君らをだ。これより先の真なる戦いに相応しい人物を選定する為である。言った筈だぞ"十分に生きろ"と。その言葉に満たない者はこの場において道を開く魂として散華して貰った」
散華して貰った…?
つまりそれは――死んだ? いや、この人物によって殺された?
余りにも勝手な理屈だ
「つまり何だ、いらねぇ奴は死ねと?」
再びトーマが噛み付くように口を開いた
何故、奴はこんなに噛み付いているのか――分かる気がしたが、思い出せなかった
「俺が欲しい命の奴がいたらどうしてくれんだよ!!」
吼えながらトーマは一気に駆け出した
真っ直ぐに聖槍十三騎士団へ突っ込む
だが、辿り着く前に一つの影が降り立ち――トーマの顔面を掴んで止めた
「テメェ…」
荒々しいという事がすぐに分かる口調
何よりも私が驚いたのはその人物――男が白い、私のような白さを持った人物であった事だ
「アイツ…ヴィルヘルムとかいう…」
それに反応したのは意外にもジンであった
「ちょっと見てりゃ何だ…俺とキャラが被ってんだろォ!!」
ヴィルヘルムとジンが呼んだ男はトーマの腹を蹴り込む
ブーストもないのに蹴りを入れられたトーマの身体は吹き飛び転がった
「ざ、けんな…テメェがキャラ被せてんだろ!!」
体勢を直したトーマはもう一度駆け出す
だが、不意に止まった
いや違う――私達も止まっている、足元へ長く黒いものが届いている
「ごめんね、今はちょ~っと我慢して欲しいかな」
先程の男とは別の場所――少女から黒いものが伸びていた
「アンナ!?」
彼女に素早く反応したのはケンタだった
直後、聖槍十三騎士団の元に次々と人が集まる
「クリス…あれ…」
「あの時の仲良し兄妹さんだ!」
「迷子神父…シスターも…何で…?」
クリス、リアナ、エリーまでも知っているという反応だ
メルクリウスと神父姿の男を除いて全員同じ軍服――そうだ、これこそが…
「では、開戦としようではありませんか――獣殿」