第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
「卿ら、ここまでの奮闘は誠に大義であった」
ラインハルトが一歩踏み出し、朗々と口を開いた
美しく澄んだ声――それだけだと言うに、身体が逃げ出したいと感じている
「私は卿らの愛を見届けたい。その為には、障害が付き物だ。よって我等黒円卓が卿らの最後の障害となる事で愛してやろう」
聖槍十三騎士団が最後の障害となる――?
つまりそれは…彼等がラスボスになるということ…だと?
「有り体に言えば、我等が反旗を翻すという事になるな。しかし卿らの愛が我等を越えるならば、卿らの言う現実に戻れる事を約束しよう」
現実に帰る――その為に聖槍十三騎士団を倒す
人を倒す事と自分達が帰る事、その二つが今多くのプレイヤーの中で天秤にかけられている
「今後どのような動きをするかは卿ら次第だ。我等に歯向かうも、尻尾を巻いて逃げるも、全て愛してやろう」
ラインハルトがここまで語った瞬間、騎士団を中心に光が広がった
同時に身体が動くようになる――しかし、向こうには届かないと直感していた
「我等は高みにて待つ、逃げも隠れもせん。むしろ、卿らと会える時を楽しみにしているぞ」
言い残すような言葉と共に、聖槍十三騎士団は消えた
残されたプレイヤー達、開かれた次の層への扉は更なる戦いへと誘っている
しかし私は、動けなかった
大切な人達を次々と喪い、唐突に新たな状況を突き付けられ、どうすれば良いのか分からなかった
ここにおいて、第五十層はクリアされたのである