第28章 第41層～第50層 その5 "Einsatz"

四方向に伸びた光の筋は､それぞれが一度曲がった

―――生まれて来たものは 滅びねばならない
　　｢Was entstanden ist, das muβ vergehen.｣

―――滅び去ったものは よみがえらねばならない
　　　｢Was vergangen, auferstehen!｣

―――震えおののくのをやめよ
　　　｢Hor auf zu beben!｣

光の筋はそのまま直進し交わる事なく止まった
その形は鉤十字､ハーケンクロイツであった

―――生きるため 汝自身を用意せよ
　　　｢Bereite dich zu leben!｣

その形が出来上がると同時に言葉を紡ぐ四人の声が重なった

―――おお 苦しみよ 汝は全てに滲み通る
　　　｢O Schmerz! du Alldurchdringer!｣

―――おお 死よ 全ての征服者であった汝から 今こそ私は逃れ出る
｢Dir bin, o Tod! du Allbezwinger, ich entrungen!｣

形の成された光は辺りを覆うかのように､その光量を増した

―――祝えよ 今こそ汝が征服されるときなのだ
　　　｢Nun bist du bezwngen!｣

そしてラインハルトが終わりとばかりに言葉を紡いだ

｢…ざけんなよ｣

意外にもそれに反応したのはトーマであった

｢テメェ等…何する気だコルァ!!｣

その叫びに反応したのは六人目の男
ニヤついた気持ちの悪い笑み
その瞳は､蛇だった



　　　　　　　 ―流出―
　　　　　　　Atziluth――



蛇がたった一言紡いだ瞬間､周囲が見えなくなる程の光が全体を覆った



　　壺中聖櫃 不死創造する 生贄祭壇
｢Heilige Arche――Goldene Eihwas Swastika｣


光の中､最後まで見えたのはその蛇の姿であった