第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
彼らの内、動き出したのは三人
その中でも最も速いのは白髪の少年――シュライバー
「ハハッ、ハハハハハハハハ!!」
笑いながら飛び回るように動く姿をボスは捉えられない
いや、私達でも追い付かない
「泣き叫べ劣等――今夜、ここに神はいない」
言葉と同時に武器を取り出した――それは銃
そこから放たれた弾丸は異常な数であり、明らかに異常な銃である事が見えた
(待って…銃…?)
そもそもそれはおかしいんじゃないか、と直後に感じ取った
一番最初の時に部長が言っていたじゃないか…銃と魔法はないと
なのにシュライバーは平然と銃を使っている
そして、後から攻撃した人物も異常であった
「フン……」
煙草をくわえたままの女性――エレオノーレ
爛れた痕が痛々しく残る顔を、さも栄光の如く歩いている
そのまま彼女は右手を前へ差し出した
そこに突然現れたのは焔――何のプロセスも無しに焔をボスへ放った
さも当たり前にやっているが二人とも有り得ない真似をしているじゃないか
少なくとも、私達には出来ない筈だ
この攻勢にボスは全く手も足も出ないという具合、まるで雑魚を処理しているかのようだ
ボスの必死の抵抗なのか抉る地面や木々を投げ付けるが意味を成さない
シュライバーには回避され、エレオノーレには燃やされる
そして、三人目――マキナはそんなものでは崩れない
三人の内、誰よりも遅く見える
しかし、纏う雰囲気は最も異常だ
「………」
他の何にも頓着せず、一歩一歩進んでいく
何事もないかのようにボスの前に辿り着いた
「……自由を!!」
低く、短く紡がれた言葉と同時に繰り出されたのは拳
その拳はボスに真っ直ぐ撃ち込まれ――ボスは呆気なく砕け散った
言葉が出なかった
たった三人で、しかもこれと言った労もなくボスを倒した
しかし――
「では、今こそ――イザーク」
――再び悪寒が走る
同時に、記憶が刺激される
この声…聞き覚えがある…
(そうだ…最初の…)
このゲームが真に始まった時に聞いた……蛇だ
頭の中で繋がった
聖槍十三騎士団とは――
「駄目待って!!」
思わず声を上げたが、その時は既に遅かった
―――蘇る そう あなたはよみがえる
「Auferstehn, ja auferstehn, wirst du,」
イザークと呼ばれた少年の声が響き、"それ"は始まった