第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
「ふざけないで…」
絞るように紡いだ言葉は怒りに満ちていた
トーマの顔面は動かず、拳がめり込んでいたがそんな事は気にならなかった
「お前…」
一瞬何か疑惑のような目線を奴はした
しかし、その視線は別の何かによって変えられたようだ
「どけよ」
私の顔を押すように突き飛ばす
半歩前へ出た奴はトンファーを構えていた
同時に奴が開けた穴から何かが飛び出し――
「オルァ!!」
――トーマが拳を振り下ろした
地面に落ち、埋もれたのは虫のような姿
敵だった
これが毒を持った敵なのだろうか
「ここまで来るか…ここは地上に出た方が良いかもしれんな」
足早に歩き出したジンが口を開く
「ん、多分一杯来る」
頷いたエリーも動き出し、私の腕を引っ張っていく
「エリー…」
「駄目、今は行かないと。無駄になる」
私を引っ張るエリーの表情はいつもと変わらない
しかし、瞳は苦渋に満ちていた
「リアナ、行こ?」
「そう…だね。折角会えたんだし、ここで死ぬ訳にはいかないんだから」
クリス、リアナも続いて動き出す
「んだよ、やらねぇのか。しょうがねぇ奴等だ」
何故かトーマもその流れに加わった
「……スンマセン」
最後に残ったケンタが小さく呟き、流れに加わった
こうして偶然に合流した七名のプレイヤーが、揃って地上へ出る事となった