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SAOGs

第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"


地面に寝かされたシンジ先輩は、明らかに様子が違っていた
顔色が普通じゃない
健康なんて言葉を根こそぎ奪ったかのような白さだ

「私と会った時は、もうこんなで。何か…噛まれたとか言ってたけど」

噛まれた
だとするなら、毒
すぐさまストレージを開いて解毒剤を探す

「止めとけ止めとけ。助からねぇから無駄だ」

後ろから聞こえるトーマの声に苛立ちを覚える
露骨に舌打ちをして解毒剤を取り出した
しかし、私達が動く前にシンジ先輩が起き上がり、ゆっくりと立ち上がった

「テメェ…無駄たぁどういう了見だ…」

顔色が悪いままふらつきながら立つシンジ先輩
目元には隈のような暗い跡がハッキリ浮き出ている上、普通以上にゲッソリして見える

「俺はな…頼まれてんだ……アイツに…キョウヤに…コイツ等を…生きて、帰すんだって…」

シンジ先輩はふらつく足取りのままホームに手をかける
だがその瞬間有り得ない事が起きた
シンジ先輩の背中が盛り上がった

「なん、だ…? ――がっ、あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」

何が何なのか
それが分からないまま唐突に事は進んだ
シンジ先輩の背中は本来人間では有り得ないような盛り上がりを見せ――そのまま、弾けた

「ぇ…」

同時に砕け散るシンジ先輩の全身
目の前で、今しがた起きた事が全く理解出来なかった

「だから言ったじゃねぇか。無駄だってよ」

まるで話を聞かない子供に対する口調
この状況で全く空気を読まない発言であったが、奴はそんな事を意に介してはいない

「噛まれた奴は毒で死ぬ、必ずな。血清とか解毒とか無意味だし、死ぬのは変わらねぇなら放置しといた方が良いってのに」

「―――」

トーマの言を聞いた瞬間、何かが切れた
振り向き様、私の拳が奴の顔面に撃ち込まれていた
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