第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
「何だ!?」
唐突な震動にケンタが声を上げる
まさかと思い私は天井を見上げる
ボスかそれとも別の要因か――だが、ここがもし崩れるなら退避しなくては……
「いや、違うな」
だがジンはそのような見解を示した
同時にエリーは壁の一点を指差した
「ん、あそこ…かな」
エリーの指した一点――線路に降りた目の前の壁
よく見れば、そこの亀裂が震動の度に少しずつ広がっている
そして数秒もしない内に、壁は轟音と土煙を吐き出した
鬼が出るか、蛇が出るか――ジンとケンタが武器に手をかける
そこから現れた影、土煙を突き抜けて現れたのは人
「お、やっと地上に行けるな」
最悪の人物――トーマであった
こんなタイミングで出会すとは信じたくなかった
「あん? 何だオメェ等、殺る気か?」
武器に手をかけたジンとケンタを見つけた奴は同じようにトンファーを構える――が、ジンがすぐに武器から手を離した
「馬鹿か、何も無しにいきなり壁から出て来てみろ。誰だって警戒する」
「そうかい。ま、どうでも良いんだがな」
言いながらトーマもトンファーを仕舞う
本当に嫌な奴だ
「ちょっと! 何で一人分の大きさなの!? アホなの!?」
ついでトーマの開けた穴からもう一人の声が響いた
ややあってから出た姿は埃にまみれていたものの誰であるかはすぐに理解した
クリスと同じその見た目、違うのは唯一瞳と性格のみ
「リアナ!!」
クリスの双子の姉妹――リアナである
「クリス!?」
肩で別の人を支えるリアナ本人も、クリスに気付いたようで顔を上げた
随分と苦労をした、と言った顔だ
心中察するとしか思えない
「何となくそんな気はしてたけど良かった~。ね、ね、怪我してない?」
「私は良いけどこっちの人! 何かヤバイかも…」
言いながらリアナは抱えた人を地面に寝かせた
私やケンタよりも長身の男性――
「マジかよ…」
「シンジ先輩…」
――シンジ先輩であった