第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
「どうやら上に行けそうだな」
人っ子一人いないのに、普通の地下鉄の駅と同じように電気の点いているホームに登りながら、ケンタは口を開いた
確かにその通りだ
今三人しかいない状態で地上に出ても、結局ボスには対抗できない
「リアナにも会えないし、どうしよっか?」
如何ともし難い状況
どうすべきか悩みが生じた瞬間、暗闇から何かが飛んできた
瞬時に警戒し、視線がそれに向かう
ホームを転がったそれは人よりも明らかに小さい
虫のような姿は身悶えし、砕け散った
(これは――)
先程まで暗闇の中にいたであろう敵だ
それが砕け散ったという事は――
「全く…こんなばかりか…」
――倒した人がいるという事
暗闇から現れた人物
それは身の丈程もある巨大な剣を持っていた
バンダナを頭に巻いた長身の男性――ジンであった
「お前ら…こんな所にいたとはな」
彼は私達にさして驚いた様子もないようだった
「ん、やっぱりいた」
その答えというべき人物
弓矢を携えた小柄な少女
「エリー……」
その姿を見て、驚きのあまり私は持っていた剣を落とした
床から何かが砕けた音がしたが、そんなものは気にならなかった
轟音と共に消えたと思っていた姿
それが生きていた、そして目の前にいる
「エリー!」
ただそれが嬉しくて、私はエリーの元へ駆け寄り、彼女を抱き寄せた
「良かった……エリーが生きてて良かった…」
腕と身体に伝わる感触
それがエリーの存在を確かなものとして、私に伝える
ややあって、忘れるなとばかりに咳払いが聞こえた
「再会を喜ぶのは後でも出来る。それよりも今は、どうするかだ」
ジンの声に我に帰る
確かに現状最も大事な事はボス戦を終わらせる事
どうするか、それを意識したと同時に――
「あの~、リアナ――私の双子の姉妹見ました?」
――クリスの声が響く
元々彼女はリアナと会う為に合流したのだ
「双子? いや、知らんな」
「ん、見てない」
しかしエリーもジンもリアナは見ていないというリアクションであった
「ん~、そっか。じゃあどうしよっかな」
状況は悪く、見つけたい人は見つからない
手詰まりの文字が見え隠れした瞬間――地下にあるホームが揺れた