第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
「あはは…やっぱりそうなるよね。じゃ、逃げよっか」
そう言ってクリスは私に手を差し出した
そうだ、もう一人じゃない
友がいて、仲間がいる
ならば何故諦めようとするのか
希望があるなら――と私もクリスの手を掴み、立ち上がる
「うん、行こう」
そのまま私達もケンタが走り去った方向へ走り出した
それからケンタに追い付くのに、時間はかからなかった
「追い付くの速すぎじゃね!?」
そんな理不尽なツッコミを受けつつ私達は敵を何とか撒くことに成功した
取り合えず何とかなったようだ
「ありがとう、二人とも」
息を整えながら、礼を口にする
「いいのいいの。こういう時は助け合いだもんね」
「まぁ、まさかこんな中で会えるとは思ってなかったけどな」
全くその通りだ
しかしまさかボス戦でクリスに会うとは……しかも何処かにリアナもいる
珍しい事だ
「それなんだけどね。半分突破するって言わうから、何かの記念にと思って二人でコッソリ入ったんだけど……いやぁ、こんな具合とは思わなかった訳で」
それもそうだろう
正直な話、私も今回のボス戦は何かが変だと感じている
今までのボスにはなかった有無を言わせぬ勢い
あの攻勢は異常さすら覚える
余りにも無差別だ
そうなると、仮に現在ボス戦に参加している且つ現在も生きているあらゆるプレイヤーが再合流しても、まともに戦えるかどうかである
「だけどよ、何とかするしか生き残る道がねぇんだよな…」
溜め息を吐くケンタ
それが今の現実であった
これ程までに"いつの間にか戦いが終わってくれないか"と願った事はない
だが変化という変化は起きず、見つけた変化と言えば、漸く地下鉄の駅に辿り着いたという事だった