第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
開く扉から射す光に我に帰る
反射的に顔を覆った時、朧気な影法師は見えなくなっていた
(生き残らなきゃ…)
ただそれだけを胸に、光の中へ向かっていった
次に見えた景色、それは曇天であった
足に伝わる感触は芝生のそれ――広々とした公園であった
周りにはビルが建ち並び、テレビで見たことのある黄色い車が多数停まっている
まるでアメリカ――何処かの都市をモチーフにしているのだろうか
しかし不安を掻き立てられる
今までのような廃墟の街ではなく、人がいてもおかしくない街並みだ
それが全く無かった訳ではないが、今の私達の状況もあいまって普段より不安を感じる
頼りない力をもって剣を握る
気を確かに持たないと戦う事はおろか、生き残る事も出来ない
そう感じ、呼吸を整えようとした瞬間――
「なんだ?」
――後ろから声が聞こえた
何の事だろうかと振り返ったと同時に凄まじい衝撃と土埃が私達を襲った
咳き込みながら、視界を確保
その先に見えたのは巨大な顔
見た事がある顔――アメリカにある自由の女神像の顔だ
無造作に転ぶ顔の下に幾つもの結晶が散る――死んだ? 今ので?
当惑し困惑し、唐突な死に背筋が凍った
直後、私達のいる場所を影が覆った
上から来る――潰されるまいと各々が散り散りとなって回避
そこに再び何かが落ちてきた
土が跳ね上がる程の衝撃と共に現れた姿は自由の女神像ではない
生き物――蜥蜴のような四足、しかし膜のような羽がある
爬虫類とも哺乳類とも取れぬ姿――"怪物"というイメージを具現化させたような姿だった
現れるHPバー、記される名は"The Destroyer"
開戦を告げるように怪物は長く咆哮した
グランギニョル
「宜しい。それでは今宵の恐怖劇を、始めよう」
咆哮と共に、何処からかそのような言葉が聞こえた