第28章 第41層~第50層 その5 "Einsatz"
正直、まともにやれるとは思えない
ボス戦に対してこんな感覚を抱いたのは初めてだ
これは多分、間違いなんかじゃない
今のシンジ先輩は、少し前の部長と同じ―かもしれない
三人―ただの三人ではない
かけがえのない三人だから、こうなってしまう
(私には、どうにも出来ない…)
溜め息が漏れる
どうにも出来ない感覚からそうするしかなかった
不意に左手に別の熱を感じる
視線を動かした先にはエリー
何も言わず、手を握っていた
何も言わず、握り返した
それだけでも、今は嬉しかった
そんな気分を孕んだ私達とは裏腹に、他のプレイヤー達の士気は高かった
半分を越える――そこが希望であると、様々なギルドからプレイヤーが参加していた
紅蓮団、沈黙凄艦の二大ギルド
私達のような小規模ギルドやソロプレイヤー
そして、聖槍十三騎士団
三十後半から彗星のごとく現れ、破竹の勢いでボスを倒し続けたギルド
私がその姿を見るのは初めてだった
参加者は六名
何よりもまず目を引くのは黄金の男性だった
無造作に伸ばしているだけなのに、完璧であると言わざるを得ない黄金
一目で彼が別格なのだと分かる
その周りに、同じ黄金色の子供、黒髪の偉丈夫というべき男性、顔の半分が爛れた赤の女性、右目に眼帯をした白の少年…いや、少女だろうか
そして――
(あれ……?)
――六人目の人物を確認しようとした時、視界にノイズが走った
視界? いや、もっと別の場所にだ
瞬間、今しがた確認した人物の名前が急に浮かんできた
黄金―ラインハルト・ハイドリヒ
聖槍十三騎士団のトップだ
子供はイザーク、黒髪の男性はマキナ
赤の女性はエレオノーレ、白の少年はシュライバー
一気にその名が浮かんできた
どうしてだろう、まるで最初から知っていたかのようだ
しかし、六人目の人物だけはそれが浮かばない
いるのかいないのか、注意しても朧気なその人物に奇妙な感覚を覚えていた