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SAOGs

第27章 第41層~第50層 その4 "転換点"


力も無く泣き喚くだけの彼女の拳は最早効果がない
それでも彼女は叫びを上げながら、ボスを殴り続けた

その光景にエリーは何も出来なかった

ただ彼女の暴走を見るしか出来ず、止める力も、自ら動く力も、持ち合わせてはいなかった

そうしている内に彼女はボスに跳ね飛ばされた

「リリィ!」

幾度か跳ね、反転するように彼女は体勢を直す
静かに唸る彼女は人の様相でない、しかし彼女が人である以上の傷がついている
このままでは彼女が次に消える者となるだろう
だが、今の彼女はそんな事に頓着していない

行き場の無い感情を八つ当たりの如くぶつけるが為、既に発揮出来る力が無いのも分からずただただ暴れまわるのみ

再度接近するボスに合わせて、彼女は跳躍する
だが、繰り出した拳には速さも重さも無い
故に攻撃を命中させたのはボス
速度と勢いを付けた身体を武器に、彼女に向けて体当たり――一度ではない
反転し、彼女の後方からもう一撃
その後も四方八方から連続で攻撃をかける

「お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!!」

空中で手玉に取られているにも関わらず、彼女は止まらない
だが、全てが外れ――意味も成さず空を切る

その光景はエリーに僅かな変化を与えた
それは彼女が"いなくなる"事への強い拒絶
他の誰かでは生まれない、残酷で純粋な感情――死んで欲しくないという、強い感情であった
しかしそれはエリーに行動させるだけの勇気を同時に与えた
構えるのは弓矢ではなく、チャクラム

(リリィは速い。でも今やらないと――!)

僅かばかりの勇気と、天賦の才を以てほんの一瞬を見切る
彼女を捉え、且つボスから離す
その一瞬に向けて――

「――っ!!」

――チャクラムは飛んだ

ボスが通過した直後、そして彼女は遅かった拳を振るっている
その拳、左手に向けて飛んだ

だが、チャクラムの到達直前に、彼女の左腕が斬り落とされた
ボスのカッター――新たに現れたそれが僅かな勇気を不意にした

そして彼女はもう一度死へと向かう攻勢をかけようとする
あぁ、駄目だとエリーがそう思いかけた瞬間――


          レディ
「落ち着いて下さい、お嬢さん」

――彼女に幾重もの糸が巻き付くのと同時に、声が響いた
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