第27章 第41層~第50層 その4 "転換点"
首以外に糸が巻き付き、ミノムシのような状態になった彼女は素早く地上に引っ張られた
そのまま勢い良く床となっている板にぶつかって静止した
「おや、申し訳ありません。少々力加減を間違えてしまったようですね」
そして声の主は前に出る
長身と言える身体、長い手足の男――暗器の類が自身の装備なのか、手の辺りから糸が出ている
「私はシュピーネ。聖槍十三騎士団黒円卓第十位、ロート・シュピーネ。以後、お見知り置きを」
名乗りのような声が響く
直後、ボスがそれまでよりもスピードを上げてシュピーネと名乗った人物に体当たりをかけた
「おやおや」
だが、彼はそれを軽く回転して回避
全く余裕だと言わんばかりである
「何と血気盛んな事でしょう。しかし、私の敵ではありませんね」
呟きと共に続けて射出されたカッターを踊るように回避
続けて現れた杭も軽々回避
同時に四方から飛びかかったボスの取り巻きを手から放った糸で絡め取り、輪切りにするように断ち切った
流れるような動き
言いたくはないが、華麗ですらある
「早々ではありますが、終わりとしましょう」
そうして彼はもう一度糸を放った
その糸は高速で飛び回るボスをいとも簡単に捉え、あまつさえその動きを停止させたのである
さようなら
「Auf Wiedersehen. 貴方の命は私の糧となるのです」
そして特に力をかけた様子もないまま、ボスは輪切りにされ砕け散った
「それでは皆様、ごきげんよう」
元に戻る空間、去っていくシュピーネ
唐突に現れ、唐突に去った台風の如く全ては終わった
ここにおいて、四十九層はクリアされ全ての転換点たる第五十層への道が示された
ただ、その代償という重さを、"残された四人"は感じなくてはならなかった