第27章 第41層~第50層 その4 "転換点"
「大丈夫だな?」
すぐ目の前にある部長の顔
語る瞳には、何か思い詰めたものを感じた
だが当の部長はすぐさま立ち上がり、もう一度ボスに向かおうとしていた
「あ、あの!!」
思わず私は口を開いていた
振り向いた部長と視線が交わる
「私…私達、そんな簡単に死にません!」
溢れ出た言葉に部長は一瞬戸惑いの色を見せた
言いながら、私も当然のリアクションだと感じる
だが今、引っ込む訳にはいかなかった
「だから…無理、しないでください」
部長の表情が苦いものに変わる
直後、ボスの羽が赤く光る
同時に板の上に赤い玉が幾つも現れた
見覚えがある―今の状況を作った爆弾だ
そして、部長の真後ろにもそれは現れた
「っ!」
瞬時の判断で部長の腕を引っ張る
直後爆発―勢いは部長を押すように加速させ、それを私の身体で受け止める事となった
「知り合った人がもういないのは…辛いです悲しいです、そんな程度じゃ言い表せないです。仇を取るとか、弔うとかそういう事をしたくてクリアしに行こうって気持ちになるっていうのも知ってます」
胸元に部長がいる
しかし、これまで度々感じていた妙な感覚は無く、ゆっくりと言葉は紡がれていった
「でもだからって部長一人が、もういない人を―セレナさんを背負おうとしないでください。一人だけで背負って、それで…それで部長までいなくなったら…誰が背負うんですか」
確かに私達は部長程セレナさんを知らない
たった少ししか知らないとしても、 一人の人に一人分の死は重すぎる
「だから信じてください。一人で思い詰めながらクリアを目指すより、私達全員で背負って乗り越えるって」
それは部長が私に言った事
獣染みた私が私のまま進む、切っ掛けになった小さな一言―今は私が部長に返していた
「……ぁ…」
戸惑うような部長の瞳
直後、何かに気付いたように開かれた
ボスの攻撃だ――今は羽が何色かは分からないが、音で分かる
芝刈機のような、カッターの類いが複数だ
「離して避けろ!!」
最早間に合わないタイミング
離せば私は回避出来る――だが、そんな事をするつもりはない
「大丈夫ですよ」
代わりにもう一度、部長の目をしかと見ながら、伝えた
「私達、全員で七人じゃないですか」
直後、私に伝わったのはカッターが身体に刺さる感覚ではない
二人分、割り込みをかけた震動だった
