第26章 第41層~第50層 その3 "転換点への道標"
「あ?」
何かとトーマが振り返った先には男
騎士のような装束、弄くったのだろう水色の髪、そして腰には――刀
「貴様の戦い、凡そ人のするものではない。戦場に身を置く人間として、正しく恥だな」
唐突に現れた男
その目は冷ややかであった
「じゃあ何だ、テメェは恥の無い戦いのイロハでも教えようってか?」
それが気に食わない
そう感じたトーマは食って掛かる
だが直後に彼は、何らかの危機感を覚え身体を反らした
一閃――
瞬間的な光の正体は抜き放たれた刀であった
しかもその軌跡は明らかにトーマを斬ろうとしたもの
「そんな真似はせん。恥ずべき人間に言う言葉はただ一つ――死ね」
男は全く変わらない冷ややかな目で、"殺す"と宣言した
「上等だよォ! 俺は今はイライラしてんだ……テメェでスッキリすんのかァ!!」
それを切っ掛けにトーマは跳躍するように駆け出した
一気に距離を詰め、拳を放つが刀そのものに防御される
刀とは思えない程尋常ではない耐久性――構いはしない
更なる一撃を加えようとした瞬間、腹部に衝撃が走る
膝蹴り――僅かにトーマが怯んだ瞬間、男は防御した刀を押し上げ、トーマとの間に距離を作る
直後、トーマの視界左側から刀が襲い来る
想像以上に速い――咄嗟の判断で左のトンファーを防御に回す
刃は防いだが、それが僅かな隙を生んだ
男の刀を持っていない左手――それが掌底となってトーマの胸部に直撃した