第26章 第41層~第50層 その3 "転換点への道標"
真っ直ぐ歩くトーマの進路上にそれはいた
モンスター――敵の類いであろう事は誰の目にも明らか
(邪魔だな…)
故に彼は駆け出した
イライラが募るせいもあり、その挙動は彼自身が思った以上に速く重かった
「オルァ!!」
巨大な敵を確認せずに殴り付ける
吹き飛ぶように倒れた時に漸くトーマは姿を確認した
巨大なヒヒ――素早く体勢を直しトーマに襲い掛かる
叩き潰そうとばかりに腕を振り上げる
「だから何だよ!!」
斜め上から敵の掌――構わぬとばかりにトーマは拳を繰り出した
真正面からぶつかり合った互いの手、軍配はトーマに上がった
敵の掌は弾かれ上向きへ
その間にトーマは跳躍―敵の首元を潰すように左手で掴み掛かる
直後、残った右手で敵の顔面を落とすように殴り付ける
地面に叩きつけられる敵
それでもトーマの攻勢は緩まない
仰向けに倒れた敵に乗り更に拳を撃ち込む
まるでそれまでの苛立ちをぶつけるように、拳を放つ
それでも収まらない――故に相手を壊す
牙を無理矢理引き抜き、皮を剥ぎ、内蔵を潰してから抉る
意味の無い蹂躙は瞬く間に相手を砕け散らせていった
それまであった巨体が消え、代わりにアイテムの取得を伝えるウインドウが現れる
「………」
しかしトーマの心の中にある苛立ちは消えない
というものの、目の前の敵は倒したが故に今は成す術も無い
また宛もなく動き出そうと、そう決めた時――
「汚い戦いだな。品がない」
――彼の耳に別の男の声が入ってきた