第25章 第41層~第50層 その2 "Love"
エリーの囁きが頭の中を反射する
(ここで…ずっと……)
甘美な誘い
だがこの言葉が反射した途端、私の中の何かが反発した
(ここに…ゲームに…? 帰る所が、あるのに…)
帰る所――
それが浮かんだ瞬間、今までの酩酊が一気に覚めた
そうだ―私は、私達には帰る所がある
ここでこんな酩酊に酔っている場合じゃない
「エリー」
「何?」
いつもと同じタイミングで言葉が返る
しかし、それは何かの虜になったような、そういう口調だった
「どいて、こんな事してる暇はないの」
だからこそ、毅然と言い放つ
私が今すべき事は、こんな事じゃないから
しかしエリーは今だ酩酊の中にある
故に何を言っているか分からないという表情だ
良いだろう――だったらこっちも強行手段に出るまでである
指が絡んだ手に、腕に力を込め、エリーの腕を徐々に動かす
ステータスやエリー本人の才もあってゆっくりにしか動かない
だが、それでも今のエリーには驚嘆すべき事態であるようだった
「リリィ…?」
私が何をしているのか、それがまだ理解出来ていないかのようにエリーの左腕が押し上げられる
人の身体である以上、腕の稼働範囲を越えて動く場合、次に動くのは胴体
私とエリーの身体の重なりが徐々に少なくなり、遂に隙間が出来た
それを確認した瞬間、私は容赦無くエリーの腹目掛けて膝で蹴り上げた
「――――!!」
驚愕に目を見開きながら荒っぽく酸素を漏らすエリー
腕にかかる力が緩くなったのを感じた私は両腕を払いのける
力のバランスが崩れたエリーは頭から私に向けて落ちる
受け止める?―いや、今はそうする必要がない
こちらも頭を急激に振り上げる
それは頭突きとなってエリーを仰向けのベクトルへ変化させた