第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
後ろから急に木材が放つ乾いた音が響いた
何かと思って振り向くと―
「嘘…」
トロッコを四角く構成する為の一つの面であり辺である進行方向後ろ側の板が離れ、飛び去っていった
いや、正確には老朽化が激しく吹き飛んだと言った方が正しい
後ろ側は既に暗く、古びたレールと空気、そして奈落があるのみであった
この光景に対してまず思う
(絶対落ちたくない…!)
それを示すかのように進行方向右側の板を掴む
トロッコは増々速度を上げ、まともに立っていられない
そうこうしている内に私の反対側―進行方向左の板が飛ぶ
直後、前方に付いていた筈のライトが顔を掠める
普通に考えてこの状況で物に当たれば私も奈落の底だろう
幸い前方のレールが飛んでいないだけまだマシだ
(このまま掴まっていれば大丈夫…)
こう考えたのは失敗だった
大丈夫な訳はない
今掴んでいる板が外れてきた
これは駄目だと思い、何とかレバーを掴む
「!!」
その瞬間、さっきまで掴んでいた板が飛んだ
そして直後に残った最後の一枚も私の頭上を飛んでいく
結果、私は床と車輪だけになったトロッコのレバーを持ち、方膝をついた状態で踏ん張る羽目となった