• テキストサイズ

SAOGs

第25章 第41層~第50層 その2 "Love"


今のこの状況、私は何が出来るだろう
そう考えても、結局いつも"あの時何かが出来た筈だ"に変わってしまう

目の前で人が砕け散る
拠点のリビング―ソファーに座る私の頭に、そんなビジョンが何度も繰り返されていた
そうしていると唐突に、隣が沈んだ

「エリー」

隣に座るエリーは無言のまま私を見ていた

「ねぇエリー」

「何?」

ややあって私は口を開いていた
しかしそこからが上手く繋がらない

「私…何か、恐くなっちゃったみたい。この先、もっと酷くなるんじゃないかって」

漸く紡げた言葉は、弱々しく空間を漂う
紛れもなく、弱音である
しかしエリーは私の手に、手を重ねただけだった

「………誰だって、恐い」

ややあって出たエリーの言葉は、いつも以上に静かなものだった

「本当は、現実だってそういう世界で、だから皆生きるのに必死」

そう―本来命があるものに対しての世界というものは、そういう残酷さに満ちている
だから今、人々は自分を含めた人間が守られるような仕組みを作り上げる

そして、その仕組みから外れたのがこの世界だ

「皆、ただでさえ死ぬのが恐い。理不尽に死ぬのがもっと恐くて当たり前」

突然自分が消えるとなったらどうだろう
誰とも話せず、誰とも触れ合えない
それを皆恐がるから、生きる事に努力する

「私、リリィが死ぬのなんて嫌」

「私もエリーがいなくなるのは、嫌かな」

「うん、だから頑張ろ。死って事実を忘れないで、その人を無駄にしないように――」

「――あぁ、だから生きて、ここを出なきゃならない」

エリーの静かな言葉を繋ぐように、新たな強い声が紡がれた
声の主は、部屋に入ってきた部長だった
その顔は今までと変わって、少しやつれたような影が出来ていた

「生きて、ここを出て、瀬川の供養をする。だからもう一度、クリアを目指そう」

そのように語る部長の目に、私は何か危ういものを感じた
しかし、同時に私はただただ気圧されるだけで、何も言うことが出来なかった
/ 739ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp