第25章 第41層~第50層 その2 "Love"
セレナさんが指さしたテレビ
部長が振り向いた時既に点いていた
そこは画面だけ綺麗なままで、異様な雰囲気を醸し出していた
そこには文字――
『アダチクン』
――今までも見かけた文字が映し出されていた
「瀬川、やっぱりお前だったのか」
部長の言に静かに頷くセレナさん
そしてもう一度テレビを指さす
まるで、貫かれたであろう喉の代わりであるかのように
『コノセカイデ、アダチクントミンナニアエテ、ウレシカッタ』
次に文字が映された直後、セレナさんが青い液体を口から吐き出した
遠くでは大きな土煙が上がっていた
建物が倒れたか、ボスが地上に落ちたのだろう
「瀬川……お前……何言ってんだよ…何言ってんだよ!!」
部長が遂に声を荒げた
だが、セレナさんは一層穏やかな顔をしていた
『アリガトウ――■■■■■■』
次に文字がテレビに映された瞬間―凄まじい音量の音がその場を支配した
逆に何も聞こえなくなる程の音は、ボスのいた所から聞こえていた
「―――!! ―――!!」
部長の叫びすら聞こえない中、セレナさんはゆっくりと口を動かしていた
『サ ヨ ナ ラ』
そして、音が消えると同時にセレナさんは砕け散った
「……………」
結晶の雨の中、部長も私も言葉無く―また、動く事も出来なかった
先程とは真逆の、完全な静寂
そこにいる人は私と部長だけで、つい今さっきまでいた私達の八人目の仲間は、もういない
その日、四十四層のクリアと同時に、私達は初めて喪失というものを経験した