第25章 第41層~第50層 その2 "Love"
「あ゙っ……があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
彼女は絶叫していた
外の身体―彼女の身体では左足に相当する部分が吹き飛んだ
痛みは想像を絶し、ただただ叫び喘ぐしか出来なかった
ぼやける視界には、彼の姿は映っていない
外の身体が反撃をしているのも相まって、何処に誰がいるのかも分からない
彼女に残った数少ない感覚が、余計に彼女の痛みを増幅させ、不安と恐怖を煽った
「あ、うぅ……アダチクン…タスケテ…」
彼女は今だ姿の見えぬ彼を呼ぶ
そうでなければ、自らが壊れると直感出来る故に
「アダチクン…アダチクン…アダ――ぐっ、あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」
名を呼ぶ最中にも彼女へのダメージは止まらない
左腕が裂け、更には普通なら曲がってはいけない方向に嫌な音と共に曲がった
顔にかかる青い液体
血のように飛び出るそれの異様な冷たさを感じながら痛みに喘ぐ
外の身体に通じる歪な視界などもう見てはいない
そこに彼の姿は見えないのだ
ならば見ても意味は無い
名を呼ぶ事と痛みに喘ぐ事を繰り返すのみ
「アダチ、クン……ワタシ――」
誰もいないが故の呟き
だがそれは無情にも、外の身体が受けた喉へのダメージでかき消された