第25章 第41層~第50層 その2 "Love"
「あぁいや、明日はどう動こうかなってさ」
次いで部長の声も耳に入る
気配から察するに二人だけらしい
だからこそだ、私は動けない
「安達君、前より頼もしくなったよね」
前っていつだよ―と部長は答えた上で続けた
「この世界に入って、出られなくなって……何て言うか、俺は単に部長やってるからってのもあるけど…原因っていうか俺が皆を誘ったからさ。だからせめて、皆は生かして現実に戻さなきゃって思ってるだけだよ」
そんな部長の答えに、セレナさんの僅かに微笑んだらしい声が漏れる
「やっぱり、何処に居ても安達君は安達君だね。周りの人の事ばっかり」
「オイオイ失敬な事言うなって。皆の為に俺も生きるさ」
「最初に"皆"って来る辺り、頼もしくなっても変わらないんだ」
交わされる言葉と言葉
私は何だか…その場にいてはいけないのでは、と少しずつ感じ始めていた
ハッキリとそう思ったかは分からない
ただ、鈍く走る胸の奥の痛みがそう思わせる
「ねぇ安達君。私、ここで安達君に会えて良かったと思ってるの。今、生きようって思えるようにしてくれたから。だからね、安達君。これから皆で生きて、その中でもし安達君が危なくなったら私が――」
そこまでで限界だった
私は扉から手を離し、部屋から聞こえる声を耳に入れようとはしなかった
静かに二階へ戻り、音を立てずに部屋入り、ベッドに潜り込んだ