第24章 第41層~第50層 その1 "Survive"
私は信じられないというレベルの衝撃を受けていた
本来、狂わなくて良かった筈の人が狂ってしまう世界に
「俺も今思い出したくらいだし、気にする程のものでもねぇだろ。お前もおかしいんだからよ、白い化け物」
奴―トーマは本当に心底気にしていないような口調であった
だが、その一言は私を苛立たせるには十分だった
いや、その表現は手緩い
正しくは、"一気に怒りがこみ上がった"である
勝手に拳が動いた
それは奴の顔面を横から襲った
僅かによろめく身体を逃がすまいと胸ぐらを掴む
勢いでフードが脱げ、私本来の姿が顕になる
だが、気にする前に怒りがあった
「私は…アンタなんかよりおかしくないし、化け物なんかじゃない!!」
それ以上は上手く紡げぬ言葉
故に、後は突き放すだけだった
だが、人に言っていい台詞じゃない
故に、私の怒りは正当である
「同情の必要がないくらい嫌い…」
やはりそうだった
この男とは絶望的なまでに反りが合わない
徹底的に相反する存在だ
「良いんじゃねぇの?その方が食い合う時気兼ねせずに済む。純粋に楽しめるじゃねぇか」
それでいながらこの男は笑っている
今のが楽しいとばかりに笑っている
だから余計に腹が立つ
もう居られない
そう感じ、この場を離れようとした時―
「なんだ行くのか?いいぜ、こっちも動いてやる」
私が動くのに合わせて奴も動き出した
「ついて来ないで」
そうは言うが奴は止まらない
「何処に出口があるかも分からねぇ、敵の戦力も分からねぇ。なら"共闘"した方が楽だろ?」
こう言って来るのを止めない
もう、無視を決め込んだ