第24章 第41層~第50層 その1 "Survive"
凄く嫌な気分になってきた
イライラしてきたと言っても良い
トンファー男の変わらぬ具合が更にそれを加速させる
「邪魔しないで」
ただそれだけ言って、意識を目の前の敵に向け、駆け出す
「オイオイ、挨拶もなしたぁマナーがなってねぇな。まぁいいか……そんじゃ、餌の食い合いと行こうぜぇ!!」
そんな言が後ろから聞こえたが気にしない
私は前に進む
地上に落着した敵は既に体勢を立て直し、こちらに向かっている
敵はまず針を私へ突き出した―右へ回避する
直後、鋏が振り下ろされる―跳躍して回避
だが空中へ跳ぶことを予期していたのか、もう片方の鋏が真横から押し寄せた
剣で防御か―と行動を選択しようとした時
「ハッハァ!!」
地上からトンファー男が敵を殴った
ブーストもかけていないのに敵は吹き飛ぶ
何という威力だろうか
「危ね!!」
その方向に部長やシンジ先輩がいるにも関わらず、奴は敵を吹き飛ばした
二人は寸での所で回避したものの、直撃ならばただでは済まなかった筈だ
(危ないとか分かってない奴―!)
心の内で悪態を付きながら、追撃を決める
あの男に続くのは非常に癪であるが、今は倒す方が優先だ
そう思い駆け出そうとした時――
(あれ…?)
初めて、何かがおかしいと気付いた
視界が徐々に下に下がっている
(いや…これは…)
後ろを見て漸く理解した
砂の渦、アリジゴク―そこに私が沈んでいる
部長達とは距離が有りすぎる―自分でなんとかしなくては
だが足を前に出せば、その分落ちていく
このままでは沈み切るのも時間の問題だ
(だったら―)
ブーストをかけた拳を地面に叩き付ける
予想通り反動で身体が空中に浮く
これで戻れる―そう思った私を影が覆った
「あ…」
上を見て漸く気付いた
アリジゴクが空にいる
「しまった…リリィ!!」
「待てやコラ、俺の餌だろうが!!」
ある意味正反対の声が聞こえた直後、私の身体に走った衝撃が意識を奪っていった