第23章 第31層~第40層 その5 "再会"
それから暫くの間―二人は他愛もない話に興じた
「じゃあ、そろそろ私は戻るわね」
「おう、楽しかったぜアンナ」
立ち上がったアンナにケンタは変わらぬ笑顔で口を開いた
そうして彼女が背を向けた時――
「なぁアンナ」
ケンタは言葉を続けた
何かと振り返ったアンナに彼は語りかける
「お互い、生きてこうぜ。そんで現実に帰ったら、今度はオレがアンナの所に遊びに行くからよ」
屈託のない言葉と笑顔
何かが意外だったのかアンナは少しだけ目を開き、すぐに普段の状態に戻した
「そう、なら頑張って私の居場所を探す事ね」
それだけ言って彼女は今度こそ去った
(こりゃあ…今まで以上にキッチリ生きて、キッチリ現実に帰らねぇとな)
生きて帰る―
たったそれだけ、それだけ故に強い思いを彼は彼自身の心に刻んだ
新たにした思いを胸に、彼は彼の今の居場所へ戻っていく
空の魚入れ等、気にもならなかった