第23章 第31層~第40層 その5 "再会"
夜―それは誰も知らない時
夜―それは知る者だけが知る時
今宵も月明かりと風だけが"それ"を知っている
しかし此度は"宴"ではない
中心にいる彼女―ルサルカという配置は変わっていない
だが、彼女一人だけであった
どうにも今はそんな気分じゃない
あの馬鹿に会ったせいだろうか、と考えを巡らせていると―
「マレウス」
穏やかな声が響く
だがその声は彼女に最大限の警戒を与えた
それだけの相手である
「あら、クリストフじゃない」
クリストフ・ローエングリン
この"邪な聖人"の異名を持つ神父はそれ程の人物だ
その狂気こそが、彼女を警戒させる
「貴女も無事、準備を整えたようですね」
「そんな事を良いにわざわざ来たの?バビロンに何か言われても知らないわよ」
口調は普段と変えず、気付かれぬよう視線を鋭くする
「いえ、今回はただの伝達事項です。我々も大分戦力を整えました。故に今一度雌伏の時であると」
「そういえば、シュピーネがまだ取ってないみたいだけど?」
「構いません。彼も黒円卓の一人、いずれとるでしょう。それにどのような思惑があれど、まず取らなければ話になりませんからね」
「あっそう、じゃあ暫くボスには手を出すなって事ね」
「えぇ、宜しくお願いしますよマレウス」
そうして神父は闇に消える
二大ギルドと"表"で呼ばれている連中が彼女等への今後の負担等から休養の要請を申し出た
有り体に言えば、勢いが良すぎたのだろう
だが、先の神父の言う通り"整えた"―故に、もう取る必要はない
来るべき時に向けて、雌伏の時だと彼女も理解していた
二大ギルドが要請した"休養"を聖槍十三騎士団はあっさり受け入れた
そして、二大ギルドの合同チームが第四十層のボスを倒し、また一つ舞台を上に引き上げたのである