第23章 第31層~第40層 その5 "再会"
「なぁ…爺さんらよ…」
「何だ?」
「何でそんなに釣れる訳?」
幾度となく疑問に思ってきた事をケンタは口にした
尤も、目線も顔も釣糸の方に向いているが
「そんなもの簡単だ。腕と気分と勘と運、それだけだ」
言いながらエルドラⅤの一人―ホセがまた一匹釣り上げた
「釣りというのはな、水の状態を見る目を持ち、短気さと気長さを使い分け、"今だ"という勘を鍛えておく。それにちょっとの運が付いて良いのが初めてくる」
「そうだな。ホセは水面を見極める目を誰よりも持っている。ネロは気が短いが勘に優れていてデカいのを釣りやすい」
「バリオは気長に、確実にやってくれるのさ。要はそういう事だ」
(どういう事だよつまりは……)
ホセ、バリオ、ネロの三者がそれぞれ語る言をケンタは心の内でツッコミを入れつつ聞いていた
アドバイスにならないアドバイスにまたも辟易した時、ネロが更に口を開いた
「それでも釣れんのなら、それで良い。もしかしたら、お前にとってデカいものを引っ張り上げる運命かもしれんからな」
「はぁ……」
意味深な発言にケンタは初めて釣糸から視線を反らした
しかし釣糸はピクリとも動かなかった