第23章 第31層~第40層 その5 "再会"
聖槍十三騎士団の快進撃は止まらず、三十九層もクリアしてしまった
四十という区切りを目の当たりにし、ある声が上がり始めた
"聖槍十三騎士団に取らせすぎではないか"
この声には幾つか賛否が上がった
このまま彼等に任せれば楽にクリア出来るという声
彼等にかかる負担や自分達の経験値等の面からそろそろこちらもボス戦に参加したいという声
二大ギルド―紅蓮団と沈黙凄艦がこの声に対処すべく動いていた
尤も、短期目標を"拠点を得る"事に設定したオリジナルセブンはどのような決定が出るかを待つだけであり、ここ数日の生活は変わらなかった
彼――ケンタの現状も変わらなかった
街にある釣り場にて釣糸を垂らす事早一時間
全く釣糸は揺れなかった
「クッソ…何でだよ…」
ボヤく彼の周りのプレイヤーは多かれ少なかれ釣れている
完全に何もないのは彼だけであった
「若いな、若造」
そんな彼の脇から響いたのはしゃがれながらもしっかりした声
最早見ずともケンタには誰だか分かっていた
四人の老人―エルドラⅤの面々であった
初めて釣り場で出会った際は驚いたものの、今となっては半分当たり前の事態と化している
彼等はケンタとは違いかなりの量の魚を釣っていく―それもケンタの真横でだ
つまり、ケンタ本人が釣っているポイントは"釣れる筈のポイント"である
それなのにケンタには一匹所か、ゴム長一つ釣れない
そんな状況に辟易するしかなかった