第20章 第31層~第40層 その2 "彼と彼女の一日"
「第六層のフィールド内にある塩の湖だ。天候と時間さえ良ければ、空を完全に映し出す景色が見られる。どうやら間に合ったみたいで良かったよ」
ユウが解説する間もミヤコは景色に見とれてしまい言葉を出せなかった
茜色に一部染まり、ほんの少しだけ輝く星、という遥か天空にある景色が足元にも広がっており、その境界が曖昧になっている
辺りに自分達しかいないのも、幻想に迷い込んだというような錯覚を加速させる
「確かに…すっごい寄り道…」
漸く絞り出せた言葉はそんなものだけだった
「君の言葉を借りるなら"振り返り"のついでみたいなものなんだけどね」
それから二人は言葉もなく、暫く空と地上の鏡が織り成す景色を見ていた
「遥―」
不意にユウが口を開いた
それは普段ならば呼ばない彼女の名
「この景色、現実でも必ず君に見せる」
その意味は必ず生き残るという事
どちらも欠けずにこれから先に数多あるであろう戦乱を切り抜けるという誓いであった
「じゃあ期待してるね、佑ちゃん」
辺りに誰もいない中―二人は影を重ねて、それを誓い合った
「っていう人達もいたのよ」
それから現在アジト代わりにしている宿屋の部屋で、ミヤコはリリィにリザ達の事を話していた
武器を持たない戦い―その覚悟に答えなくてはとリリィは感じている間、突如エリーが口を開いた
「で、二人で何処行ってたの?」
「あ、いや…それは別に…」
ただしミヤコはその後の事を話してはいない
記憶に留めるのが良いと感じたからだ
しかし、相手は同年代の同性―反応はともかく、何であるかの察しはついていた
「へぇ~。ミヤ、だから二人して遅かったんだ、へぇ~」
「べ、別に変な事はしてないからね!」
しかし思い出すとミヤコの顔が僅かに熱くなるのをミヤコ自身、感じていた