第20章 第31層~第40層 その2 "彼と彼女の一日"
それから彼等―都合五人は、リザの淹れた紅茶を飲みながら何気無い話に興じ、時に子供達と戯れた
その後ユウ、ミヤコ、エリーの三名は教会を後にする事にした
「じゃあ僕らはこれで」
「紅茶、美味しかったです」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったわ」
「今度は迷っても助けないから」
「厳しいですね…まぁ、なるべく粗相をしないように努力はしますよ」
柔らかな笑顔のリザ
最後まで冴えないままのヴァレリア
彼等と後ろにいる子供達に別れを告げ、三人は教会を後にした
それから街の中心に着き、後は帰るだけとなった時―
「エリー、済まないけど先に帰っててくれるか?少し買い忘れがあったのを思い出したから」
「え?あったっけ?」
「あるんだよ。じゃあ、そういう事で構わないかな?」
「ん、了解」
そうしてエリーは先に街の中心にある転移ゲートの中へ入り、後にはユウとミヤコだけが残される
「で、買い忘れって何?」
「本当はただの寄り道だよ」
そう言ってユウはミヤコの手を引いて、転移ゲートに入る
「ちょっと、何処行くの?」
今だ彼の行動が分からないミヤコは思わず聞いてしまう
次に見えた先は切り立った山―既に大分傾いた日が長い影を作り出している
そんな景色が見えた所でユウは口を開いた
「本当はもう少し早い時間に来るべきだったけど、もうしょうがない。でも、まだ間に合う筈だ」
「何に?」
「ついてくれば分かる」
そう言ってユウは有無を言わさず、ミヤコの手を引きながらフィールドに出る
何処へ向かうのか全く分からないまま、山の中を進む事数分―景色が開けたと同時にユウの歩みが止まった
「ここだ」
言葉同時にミヤコの視界に入った景色
それは、空の景色を完全に映し出す湖という幻想的な光景であった