第20章 第31層~第40層 その2 "彼と彼女の一日"
街を当てもなく歩いていたユウとミヤコの二人はそのまま商店や露店を見ていた
とは言ってもここは第一層
武器にしろ防具にしろその能力は、今使っているものより遥かに劣る―当然の事だ
「やっぱり食材も向こうの方がランクが上だね」
彼女は彼女で食材を中心に見ている
調理スキル保持者であるが故の見地だろう
「だけど、その場にしかないものもあるだろう?」
彼のこの疑問も当然だ
一つ一つの層に特徴があり、同じ世界かと問いたくなる程の造りだ
限定品があってもおかしくはない
「まぁ確かに、本っ当にある一定の場所しか売ってないのもあるけど…下のランクのものって敵からドロップするし、その時いる層ので結構大丈夫だったりするんだよね」
成る程、と彼も合点がいった
新しい層に着くと彼女は最初に食材を確認する
その後は作りたいものにもよるが、確かに半分近くをドロップで済ませている
余程の事でもない限り、下の層に向かう事はない
付け加えるなら、ここ最近の拠点資金を貯める為の節約等もあり、ドロップが余計重宝するという訳だ
(そう考えると…変だな…)
彼は疑問に感じた
これまでも彼女に幾度か買い出しに付き合わされた事はある
しかしその時の彼女に"節約"の文字は全く見られなかったのだ
それは―
「あ、でも私節約なんてするつもりないからね。新しい層の食材って結構高いのよね~」
―非常に俗な理由であった
資金集めが上手くいっているから良いものの、悪ければどうなっていたか考えるだけで彼は溜め息を漏らしてしまう
「まぁ、それだけかけてもちゃんとした物にしたいの。現実だと意味ないかもしれないけど、だからこそせめてしっかりしたものにしなきゃってね」
今度は溜め息を漏らせなかった
現実で何も出来ないからこそ、せめて人らしいものにしなくてはならない
彼女なりの拘りなのだろう
(全く、そういう所だけ頭が下がるよ…)
そう彼は密かに感じるのであった