第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
笛吹の青年のいる木にクリスとリアナが近付いた時、トラップとばかりに再びモンスターの群れが二人の周りに現れる
「ナメるなァ!!」
ここでリアナが反転
両手両足にブーストをかけ、攻勢に出た
後ろから近付く敵を二本の剣で貫き四散させる
四散と同時にクリスを飛び越えるように後ろへ跳躍―前方から迫る敵の悉くを刻んで四散させた
「クリス!!」
リアナに呼び掛けられたクリスは既に両腕にブーストをかけている
片手槌を振りかざし狙う先―
「たあぁぁぁ!!」
―それは木そのもの
笛吹青年がのいる木を直接叩き付けた
その勢いに木は割れ、支える力を失い、徐々に横倒しになった
「うわっ!」
笛吹青年が木から落ち演奏が止まる
その瞬間に操られたプレイヤー達はまさに糸の切れた人形の如く、倒れ込んだのである
笛吹青年が土煙に噎せながら這うように現れた
私達はそれを逃さぬように彼に武器を突き付けて抑えた
「あ~あ、こんなになるなんて思ってもみなかったよ」
明らかに負けた状況なのに軽口を崩さない
非常にイライラする態度だ
そんな中、最初に口を開いたのはクリスだった
「ねぇ、貴方は―」
「皆勘違いするようだから言っておくよ」
わざわざそれを遮ってこの青年は口を開いた
酷いタイミングだ
「ボクが好きなのはお人形さん遊びだ。人は一度も殺してないよ。まぁ、結果的に死んじゃったけど」
まるで自分は違うというような口調
これはこれでイライラする
だが、それで私達はある一つの事に気付かなかった
彼は突如リアナの目に向かって砂を投げた
唐突された故、完全な目潰しとなった
「リアナ―ぐっ!」
この一瞬の間に青年はクリスを掌底を撃ち込み、跳躍―まんまと距離を取られてしまった
「それじゃ、また機会があったらね」
そんな言葉を残して彼は去った
一応切り抜けはした
しかし、逃がすべきではなかった
この事が後に禍根となる事を確信しながら、私達はその場に暫く佇んでいた