第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
ウェンドロからのダメージのお陰か頭はまだ揺れている
だが、意識はハッキリしている
だからこそ私は辺りに響く音楽を追う事が出来たし、ここに辿り着けた
矢を捨てながら音源をしっかりと見据える
青年が笛を吹いている―曲は"通りゃんせ"
成程彼が元凶らしい
そして彼がここにいて同時に近くにウェンドロがいるのは偶然ではなさそうだ
だが詮索はここまでにしよう―今大事な事はこの場を切り抜けて、全員で生き残る事
笛を吹いている彼をどうにかする事
「クリス、リアナ。私達で周りは何とかするからあの人お願い」
「ちょっ、無茶苦茶―」
「良いよ」
「って、アンタも何安い請け負いしてるの?」
「ん~、何とかしなきゃいけないし……あの人に変な所がある気がしちゃって」
「意味分かんない。まぁ、やったげるからちゃんと道作んなさいよ」
「うん、ありがと」
それだけ言って私は地面に踵を落とす
ブーストのかかった脚は地面を抉り、瓦礫を空中へ打ち上げる
「でえぇぇぇぇい!!」
そのまま無造作に剣を振り下ろす
当然ブーストのかかった誰にも当たりはしない―だが、それで良い
打ち上げられた瓦礫が四方八方に散る
それはダメージにはならないが、目眩ましにはなる
特に操られた人なら―
「行くよクリス!!」
「うん、行こうリアナ!!」
―狙い通り視界を眩まされた一瞬にクリスとリアナが駆け出した
狙いは笛吹青年の方向だ
だが壁は必ず現れる
彼女等の正面からはモンスターの群れ
「やらせねぇよ!!」
出現したモンスターにケンタが投げつけた両手斧が襲いかかる
真っ二つになったモンスターの群れは四散し、真っ直ぐな道が出来上がった