第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
リリィ達が笛吹の青年―ソラと戦っている間、多くのプレイヤー達の助力により三十二層はクリアされていた
そしてそれを感じ取る者がいた
何処とも分からない黄金の宮殿
歪に感じる絢爛さを誇る玉座に彼はいた
その者もまた黄金だった
彼の目の前にはチェス盤―相手はおらず一人で黒の駒を動かしている
だが、突如相手側―白の駒に手が添えられ駒を動かした
「卿が此処に来たという事は始めるというか、カールよ?」
黄金の視線がチェス盤から外れ正面を見据える
そこには先程まで居なかった筈の人物がいる
みすぼらしい外套だけが目立つ影法師
世界から拒絶されたような、存在出来ない筈の者である
「然り。スワスチカを開く時は目前であるが故、手筈を整えねばなるまい。貴方と大隊長の三名、そして私はともかく黒円卓の面々には少々働いて貰わねばならないでしょう」
何処かまとわりつくような声
それすら黄金は気にしないようであった
「構わぬさ」
「宜しい。ならば形成位階までは彼等に許可しましょう。ここで手を誤ってはいけない。全ては…来る開戦の時の為―」
「そして、我等の盟約と勝利の為に。Sieg Heil Viktoria.」
消える影法師
チェス盤はまた一人での暇潰しとなったが、黄金の瞳はより一層輝きを増していた