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SAOGs

第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"


幾度もぶつかり合う刃と刃
飛び散る火花と鈍く響く鉄の音
突破しようとするベクトルと止めようとするベクトルが真っ向からぶつかり合っていた

私とウェンドロの一対一は文字通り双方退かずであった
意地でもここを切り抜けたい私と、意地でも私を殺したいウェンドロ

意地はどちらも互角だった
だが、少しずつ差が開く
それは非常に簡単な差―経験とステータスだ
事実としてウェンドロは私達より少ない人数でフィールドに居続けている
だから私達より長く戦い続けた経験が動きに活かされ、ステータスに反映されている

故に一撃が重いのは向こうだし、鍔迫り合いになれば向こうが私を押してくる

「…んの!!」

状況打開の為に放った頭突き
だがこれは彼に届く前に顔を掴まれて止められる
そのまま剣を引かれて力の行き場を失った瞬間―掴まれた顔を中心に身体が持ち上がり、そのまま空に投げ出される
背中から勢い良く木に衝突―またも空気が身体から強制的に排出される

体勢を立て直す前に視界に入ったのはウェンドロの手
またも顔を掴まれた私はそのまま頭を木にぶつけられた
シェイクされる頭、一瞬ずつ途切れる意識―二度三度とぶつけられ、徐々に朦朧としてきてしまった
身体に力が入らない
そのまま私は地面に投げ捨てられる

霞む視界、だが目の前でウェンドロが私を見下ろしているのは理解出来た

「やっとだ…やっと…」

既に達成したかのような口調で刃を私に向ける
絶体絶命―そんな言葉が浮かんだ瞬間、耳に何かが響いてきた
聞いた事がある曲―いや、ついさっき聞いた"通りゃんせ"だ
これに気付くと同時にウェンドロの顔色が一気に変わった

「がぁっ…クソ…あの野郎、ピ~ヒャラピ~ヒャラぁ!」

何だか分からないが今しかない
そう感じた私は無理矢理身体を動かす
まだ頭は揺れているが気にしていられない
ブーストをかけた掌底をウェンドロの顔に撃ち込んだ

吹き飛ぶウェンドロ―どうなったが分からないが今がチャンス
目指すは…"通りゃんせ"の鳴る方だ
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