第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
「ク…ソッ!」
クリスが自身にぶつかった衝撃に耐えながらケンタは斧を振るう
しかしこれも命中せず距離を取らせただけだった
ソラの笑顔は崩れていない
しかし三人の消耗は激しかった
「結構頑張るね。じゃあこういうのはどうかな?」
ソラはそう言って指を鳴らした
辺りに一瞬響く音―直後、木々の陰が蠢き出した
それはソラの周りだけでなく、辺りの森からであった
三人は先程と同じように固まり、周囲を警戒する
「遊んであげなよ、お人形さん達」
その一言と共に飛び出したのは無数の敵
このフィールドに広く存在しているモンスター―二股の猫だ
偶然とは思えない出現
その敵がソラを無視している
そしてソラは"お人形さん"と呼んだ
この三つの情報で三人は結論に至った
あのソラという青年はどういう手段か敵を操っている
(もしかして、プレイヤーも?)
この状況になる直前―
共に行動していたキョウヤ達が何もない所へ攻撃していったのをクリスは思い出していた
だとするならばこの青年は危険極まりない
モンスターを駆逐しながらクリスは視線を軽く動かした先―ソラは木の枝に座って状況を眺めている
彼の手にはあの不可思議な武器
恐らくアレが原因なのだろう
だからアレをどうにかしなければならない
やっとの事でモンスターを全滅させ、三人はソラと対峙する
「お疲れさま~。でも、これで終わりと思ってる?」
言いながらソラは枝の上に立つ
そして手に持った武器を口元に近付けた
そこから音が響く―また"通りゃんせ"
揺れる空気はまるで横笛のようだ
「嘘だろ…オイ」
ケンタのボヤきは自身の周りに向かって放たれていた
音楽に合わせて現れたのはプレイヤー達
その中に、彼の仲間も含まれていた