第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
時を同じくして―
ケンタ、クリス、リアナはソラとの戦闘に突入していた
三対一
通常なら圧倒的に有利な筈の状況である
しかし、三人は苦戦を強いられていた
(アイツ…ヘラついてる割には強ぇ…)
ケンタの見解は間違いではない
あのソラという青年、三人の連続攻撃を巧みにかわすだけの力量がある
その上で三人それぞれに攻める事が出来るのだ
付け加えるなら回避と攻撃の度に木陰に消え、反撃を許さない
ヒットアンドアウェイ―
この戦術に三人はあっさりと嵌まっていた
神出鬼没という言葉がまさに似合うソラの前に撹乱された三人は必然的に固まっていた
直感的に三人はこれを選択したが、決して外れではない
そもそもクリスとリアナは戦闘経験が少ない―対人戦などもっての他だ
ケンタも経験こそ二人より上であるが、スピードよりもパワーを重視した武装―自身も武装通りの鍛え方しかしていない
だからこそ三人は固まっていた
相性が悪い、経験が少ない―それらを互いにカバーし合うやり方である
故に今もリアナの元に低い姿勢から斬りかかったソラをクリスがガードし、直後にケンタが斧で迎撃する
当たりはせず軽く距離を取るように跳躍される
だがリアナが一気に距離を詰め、逆に斬りかかる
右手の剣は袈裟斬りに―笛のような剣で防がれる―だから左手の剣を突き出す
「おっと」
ソラはこれを跳躍―地面と平行に回転する事で回避し刃は空を切る
だが、ソラが空中にいるのを見逃さぬとクリスは跳躍―上から片手槌で叩きつけようと振り下ろす
同時に地上からはケンタ―斧を振り上げる
これにもソラは慌ててはいない
ブーストをかけた脚でクリスを蹴り込む
無理矢理地上に叩き落としケンタと衝突させる
「クリス!!」
双子の相方が地上に叩き落とされた衝撃にリアナは一瞬気を逸らした
その瞬間に着地―リアナの腹へ拳を叩き込み、ソラはあっさりと三人の連携を破壊した