第19章 第31層~第40層 その1 "Chase"
漸くまともに戦えそうだ―そう感じた私達は、来た方向を振り替える
本来50名近い人数であった部隊は、犠牲と先の逃亡により散り散りになってしまったらしく
半数もいない状況だった
この状態でどう立ち回るか―そう考えている内に雄叫び、そして巨大な影が現れる
(来た―)
誰もが思った―ボスだと
サイズそのものは2mを越える程度
大男と言って外れはないだろう
だが着込んだ黒いコートの内側は人間の肉体ではない
醜悪に醜悪を塗りたくったような歪んだ顔と蠢く何本もの触手
近距離で戦えば苦戦は必至だろうそのボスは、それまでと唯一違う所があった
棒に似た武器を持っていたのである
人間の頭程もある太さ、身体程の長さ、そして引き金―
(引き金?)
一瞬その存在に戸惑った
引き金など必要だろうかと
だが直後には回避行動を取り、とにかく真っ直ぐから離れる
そうだ、ボスには理屈等無い
その直感染みた行動は間違いなく正解だった
ボスの所持した棒―いや筒から黒煙と共に大型の弾丸
ロケットランチャーだ
「うおぉい!?マジかマジかマジかよ!?」
驚愕一色でありながら回避するケンタを尻目に次々と放たれる弾丸を掻い潜る
「野郎…!」
隙間を縫うようにシンジ先輩がボスに肉薄しにいく
至近距離からのブースト、そして斬り上げ―その一撃そのものは直撃、しかし刃がボスの肉体に阻まはれ後退が出来なかった
ボスはそのままロケットランチャーでシンジ先輩を殴打した
「シンジ―うおっ!!」
殴打により吹き飛んだシンジ先輩は部長にぶつかって止まる
ボスはまたもロケットランチャーを続けざまに放ち、辺りが爆炎と轟音に支配された