第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
槍の雨が止まった隙を突いて、彼等―エルドラⅤは周囲に刺さった槍を各々弾くように消し飛ばす
「一気に決めるぞ!!」
「「おう!!」」
そのまま彼等はそれぞれの武器を合体させるように合わせる
片手斧、そしてカルロスと呼ばれていた未だ目覚めぬお爺さんがさりげなく持っていた鮫を象った二本の短剣を先端に片手剣が組み合わさり、それを甲拳で掴むように持つという何とも面妖な武器が目の前に顕現した
「「「エルドラ・ドライバー!!!」」」
ドライバー…
工具のアレだろうか
そう言われればそう見えるが、何故組み合わせる必要があったのかとツッコミを入れたくなる代物だ
直後、ボスが彼等に突進を開始
対する彼等も避ける気はないようだ
むしろドライバーを構え、またも真っ向からぶつかりに行く
「「「ドライバー・ボンバディーロ!!!」」」
両者がぶつかり合う瞬間、閃光が迸り、その衝撃の強さを物語る
凄まじい風圧が周囲を襲う中、見えた景色―それは相殺であった
いや、相殺ではない
実際は僅かに、僅かにボスが押していた
「パワーが足りない…少しだけ足りない!」
何たる事か
彼等は徐々に押し潰されるようにボスの角に押されていく
更にボスは彼等に槍の雨を降らせる
避けようの無い事態に彼等は肉体を徐々に剥がされていく
一転攻勢に回ったボスは力を込め、彼等を吹き飛ばす
またも壁に激突するまで吹き飛んだにも関わらず、ボスは攻勢を緩めない
万事休す、絶体絶命―そんな言葉が駆け巡った瞬間―
「行けよぉぉぉ!!」
あらぬ方向から声
視線を移した先にあるのは観客席
私は目を疑ってしまった
あのトンファー男がまるでお爺さん達を援護するかのように、ボスに向かって何かを投げていたのだ
鋭く真っ直ぐに飛んだそれは、ボスの目に命中し、ボスの攻勢を一時妨害せしめたのだ