第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
アレ―とは一体何なのか
誰しもが感じた疑問も無視して、彼等はまたも横一列に並び、彼等の言う「アレ」を始めた
「闇の中こそ正義が光る!」
「微かな灯火勇気にくべて!」
「燃やせ!漢の―」
「「「大往生!!!」」」
彼等は突如ポーズをしながら、各々口を開いた
何だか一定のリズムを感じる
「勇気とキック―」
「正義とパンチが―」
「アミーゴだ!!」
まさかこれは歌舞伎で言う見栄切り―決め台詞と決めポーズというやつだろうか
ボスの目の前で行うなど余りに阿呆な真似としか言いようがないが、彼等は続けていく
「皆の為に、帰って来たぞ!」
「受けよ無敵の、このパワー!」
「鉄拳!!」
「制裁!!」
「「「エルドラⅤ!!!」」」
彼等の背後で、色付きの爆発が起きた………気がした
この微妙極まりない空気の中で唯一違うリアクションをしている人物がいた―ケンタである
「まさか…あのエルドラⅤだって!?」
「知っているかい、ケン?」
誰もが疑問に思う中、唯一目を輝かせていた
「古代戦士エルドラⅤと言ったらな、約40年くらい前にザウルス帝国と戦った戦士達だ。その熱血具合から凄まじい人気だったんだ。シリーズってのを確立させたと言って差し支えはねぇ。全50話の内、前口上が毎回違うのが魅力だな」
「ん、解説サンクス」
とりあえず昔のヒーローものか何か―という事は理解出来た
しかし彼等で対抗出来るのか
ステータスはともかく元は普通の老人である筈なのに、どうやって対抗するのか
やはり疑問は尽きなかった