第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
声の主は割りと近い位置にいた
スタジアムの観客席―その端に三人…いや、三人と担がれた一人が並んでいる
そのいずれもが、高齢だ
「リィちゃん…まさかアレって…」
ミヤの予想は多分当たっている
アレはつい最近見かけたお爺さん達ではないだろうか
いや、確実にそうである
何故いるのか、どうするつもりか等と疑問が次々と浮かび上がるが、どれも言葉にはならなかった
「バリオ、カルロスのフォローを頼む。とうっ!!」
そんな誰もが思っただろう疑問も無視して、お爺さん達の内の一人―赤い服のお爺さんが跳躍した
ステータスの方が優先されるのか、意外に鋭い跳躍だ
「スクランブル・アバンギャルド!!」
彼が手にするのは甲拳―所謂ナックルというやつだ
ライオンを象ったそれは元々そうなのか、片方だけだ
真っ直ぐに拳の突きがボスの頭部に放たれる
明らかな直撃―しかし、ダメージというよりかは抑えられている
「エルグランアタックが効かない!?ぐおっ!!」
勢いを殺され、空中で動きを止められた彼はボスが頭を押すように動かしただけで吹き飛んでいく
普通ならば明らかに背骨とか、そういうアレコレが駄目になってしまう吹き飛び方であった
だが、そんな彼を青い服のお爺さんが後ろで掴むように受け止め、事なきを得た
「ネロ、尻拭いさせるな」
「ホセか」
そのまま彼等は着地
あと一人…と担がれた、というより寝ている一人が合流した
「こういう時は…アレだろ?」
「あぁ、アレだな」
意味深な示し合い
彼等は全て分かっていたかの如く、再びボスと対峙した