第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
数日後―
この層のボス部屋が発見され、それへ私達も参加する事となった
この層をクリアすればまた一つ上の舞台へ上がる事が出来る
それ故参加プレイヤー達はやる気に満ちていた―無論、私達もそうだ
だが油断は出来ない
結果としてある程度順調に事が進んでいるとは言え、敵もさる者
気を抜けば待っているものは死だ
故に、独特の緊張感を持ちながら私達は開いた大扉の間から射し込む鈍い光の中へ入っていく
僅かに眩しいと感じるのも束の間
次に目に入った景色は、現代人には割りと見慣れた物だった
屋内競技場―
ドームとか、場合によってはスタジアムだとか呼ばれる施設の中央
客席に囲まれるように私達はいた
尤も、客の類いがいる訳がないのだが
入ってきた扉が消えるまでの僅かな間に周りを軽く確認―は出来なかった
それよりも前にプレイヤー陣の真上に、巨大な影―という実体が現れた
人間よりも巨大なのは火を見るより明らか
それが上空に現れたという事は潰されるという事
そうなる訳にはいかないと各々回避する
結果、ボスを中心にプレイヤーの団体が現れる事となった
突然の事態であったがまだ冷静に、現れた四足角付きのボスと対峙する
「オルァ!!」
突然の事態はまだ続く
私達を含めた全てのプレイヤーがボスを認識したと同時に、人影が飛び出した
その人物は跳躍したのか空中におり、ボスの角を殴り付けたのである
そんな真似をするのは私の知る限り片手程しかいない
そしてその予想は大方当たっている
「どうしたどうしたぁ?正面切ってやってやったんだ、テメェも何か見せろよ」
トンファー男―いつの間にか戦列に紛れたらしい
迷惑極まりないが、今は囮をさせる
全員がそれを思っていただろう
それ程までに、嫌な存在だった
奴に殴られたボスは体勢を大きく崩したが、何とか踏み留まった
直後、身体を強張らせる
何かの予兆かという考えは当たっていた
上空から飛来する無数の影―細長いそれは槍ほどの長さがある
貫かれればただでは済まない
それを感じ、全てのプレイヤーが散開―範囲から退避した
ただ一人、あのトンファー男を除いては